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GB学部小西雅子:環境報道を変えた新しい広報戦略の本

『気候変動政策をメディア議題にー国際NGOによる広報の戦略』

https://www.minervashobo.co.jp/book/b600274.html

ビジネスデザイン学科教員の小西雅子です。小西の博士論文をもとにした新著『気候変動政策をメディア議題にー国際NGOによる広報の戦略』が、2022年3月に刊行されました。

国連COP24会議に参加する小西雅子
国連COP24会議(ポーランド・カトヴィチェ)に参加する小西雅子

 今や環境だけでなく、国際政治や経済などのさまざま分野で重要度を増す気候変動ですが、その報道では、NGOスタッフのコメントが掲載されたり、専門家、解説者、寄稿者として登場することが珍しくありません。その背景には、WWFジャパンという国際NGOが開発したまったく新しい広報戦略がありました。

 小西は、もともとはアナウンサーから気象キャスターを経て、アメリカの大学院に学び、2005年にWWFジャパンという国際NGOに転じました。気候変動に関する国連会議への参加を仕事とする小西は、NGOの社会的地位がアメリカと日本では大きく異なることに衝撃を受けます。日本の環境NGOは高い専門性をもつにもかかわらず、社会的な認知度も政策形成に与える影響力も低いままだったからです。

 2007年、インドネシア・バリで開催されたCOP13で、主要メディアがこの会議の重要な成果を報じないという事態に遭遇します。その背景には、日本のメディアがもつ構造的な問題―記者クラブ制度によって政府からの情報源に依存する体質があると分析した小西は、2008年からWWFジャパンにおいて全く新しい広報戦略を始めました。戦略的背景広報と名付けられたその手法は、気候変動交渉に関する報道記事の正確度を高め、より多様な視点をもつようになることを目的に、主要メディアの記者が取材能力を向上させるサポートに徹するという手法を採用しました。

 NGOが自らの主張を訴えるのではなく、記者の立場に立ち、彼らが必要な多様な情報を、タイムリーなトピックに関連づけて提供するなどの手法を確立したのです。本書で詳述される「WWF戦略的背景広報の5つの方針」は、NGOだけでなく、企業や行政などのあらゆる組織で応用することが可能で、そのため、学術書でありながら、広報担当者の実用書としても読まれています。

 また、丹念なメディア記者9人へのインタビューを通して、メディアの内部事情、記者個人の関心や信条などに迫ったメディア像を描きだしています。8年以上に及ぶ国連会議における日本の主要メディアとNGOによる相互作用を通して、互いがともに成長し合う過程を描いており、ドラマとしてもお楽しみいただけるのではと思います。

よろしければぜひお手に取っていただけると幸いです。

気候変動政策をメディア議題に ~国際NGOによる広報の戦略~
https://www.minervashobo.co.jp/book/b600274.html
新刊紹介記事
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/4993.html