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インソール市場についての論文が公開されました

教員の三浦紗綾子です。

英語の論文が出版されました。

Miura, Sayako. “The Developmental History of the Insole Market in Japan
Rising Health Consciousness and an Unintended Shift toward Fashion (1984–2010).” Japanese Research in Business History 38 (2021): 43-61. https://doi.org/10.5029/jrbh.38.43.

自分で英語で書くことはあっても、日本語で執筆した論文をプロに翻訳してもらったのは初めての経験で、たくさんの学びがありました。今後自分で英語で執筆する際には、今回学んだ表現を活かしたいと思います。

この論文は、日本のインソール市場で「意図せざる結果」が起こったプロセスを描いたものです。皆さんは、雑貨店やドラッグストアで、かわいくパッケージされた透明インソールを目にしたことがありますか。このファッション雑貨のような透明インソールの市場は、2000年代半ばから成長しました。なぜインソール市場全体が成熟する中、このようなことが起こったのでしょうか。

その背後には、足の健康を訴える民間団体の活動がありました。彼らは、足の健康を守るためにはファッション性ではなく靴の機能性に注目する必要があると1980年代に訴え始めました。その結果、足の健康が注目されるようになり、そこに市場機会を見出だした多様な起業家たちの行為が連鎖して、ファッション性を前面に打ち出した透明インソールがヒットするに至りました。つまり、足の健康のために機能性重視を訴える運動から、「意図せざる結果」として、ファッション性を重視した靴関連製品の市場が形成されることになったのです。

ある活動が、想定していた以外の人たちに影響を与え、それが、思いもよらない結果に結びつくというのは、社会科学の面白さの一つだと思います。この論文はこうした「意図せざる結果」の論文特集に掲載されました。他の2編の論文も、産業政策(航空・石油化学・コンピュータの産業)と、おもちゃ産業での「意図せざる結果」を扱っています。ぜひご覧になって下さい。

Shimamoto, Minoru. “Unintended Consequences of Industrial Policy
Aircraft, Petrochemicals, and Computers.” Japanese Research in Business History 38 (2021): 6-24. https://doi.org/10.5029/jrbh.38.6.

Sakai, Ken. “Chance Favors the Prepared Mind
the Confluence of Børnelund’s Business Strategy and Unintended Consequences of Educational Policies 1977-2020.” Japanese Research in Business History 38 (2021): 25-42. https://doi.org/10.5029/jrbh.38.25.