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【留学レポート】フィリピン通信 vol.2

フィリピンに留学中の平尾ゼミナールの神山ひかるさんから留学レポート第二弾が届きました!

以下、ご覧ください。

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一年で一番暑いと言われる時期が過ぎ、これからフィリピンは雨季を迎える。激しいスコール に突然の雷、その始まりはとても分かりやすい。

さて、ここへ来て2ヶ月。遅ればせながら、徐々に自分の研修の目標、ここへ来た意義が明確 になってきた。私がこの研修で達成したいことは、「新しい視点」をもたらすということ。宗教 や習慣などによって作られてきたその国での常識や固定観念を、新しい文化や世界で起きている 事について話し、またその機会を創ることで、良い意味で壊し、問題解決の選択肢を増やすとい うことだ。逆もまた然りで、先進国が途上国から学べることも無数にある。だからこそ、このレ ポートを通じて、フィリピンでの気づきや学びを共有し、微力ではあるがお互いに学び合うきっ かけを作れたらと考えている。

<クライアントとのコミュニケーション>

5月に入り、VPA(Volunteer probation assistant)の活動も増え、クライアントと接する機会 も多くなった。国民性として明るく積極的な人が多いため、とてもフランクに英語で話しかけて くれる。そんな中でいつも考えさせられるのが、彼らとの距離感である。特に定期的に行われ る個別の面談は、まだまだ手探り状態だ。各々の事情を察して障りのない言葉を選ぶべきか、ざ っくばらんに話すべきか、それとも緊張感を持たせるべきか、これまでされる側だった私にとっ てそれは違和感でしかなかった。ひとまず慣れるまでは案ずるよりも、私自身が心を開いて信頼 してもらう事に専念して、他の職員の方々からも、どうすれば彼らの本音を上手く引き出す方法 を学んでいきたい。

<フィリピン大統領選挙>

5月9日、フィリピンでは大統領選挙が行われ、現ダバオ市長のドゥテルテ氏が他の候補者に 大差をつけて当選確実となった。国民の選挙への関心はとても高く、選挙管理委員会による と、投票率はなんと、81.62%と歴史的な記録だそう。選挙当日までの雰囲気も日本とは全く異 なっていた。週末には、近くの大きな公園で支援者による集会が開かれ、若い世代や家族連れが 多く見られた。人気の差は一目瞭然で、至る所で”DUTERTE”の文字が際立っており、家の前に 貼ってあるポスターの数や応援グッズを身につけている人の数も圧倒的に多かった。テレビから 流れる選挙CMもまるで映画の予告のようなクオリティで、もはや一種のエンターテイメントで あった。今回の選挙は、TwitterやFacebook等のSNSが選挙結果に多大な影響を与えたとされて いる。平均年齢が23歳と他国より圧倒的に若いこの国では、いかに若者の心を掴むことが政 治において重要か分かる。現地の新聞で、とある記者が今回のフィリピン大統領選挙を、200 8年のオバマ大統領が就任した時のアメリカに似ていると指摘しており、なるほどなと感じた。 選挙以外でも、テレビ番組や聞こえてくる音楽等、日常の凡ゆる所でこの国は欧米の影響を強く 受けている印象だ。 ドゥテルテ氏の国内での人気はとても高いが、海外では過激な発言が注目を浴びて批難されるこ とも多い。彼がこれからどういったことを実行していくのか、とても気になる。まずは6月30 日の就任式のフィリピン国内の様子に注目したい。

<スラムの住人>

先日スラムの住人達について、寮で出会った女性と話す機会があった。 そもそもスラムの住人に戸籍はなく、法的にはこの国に存在していないことになっている。勿 論、教育は受けられないし、病院にも行けない、仕事もないし、する事がないのだという。彼 女はそんな彼らに対して、「お金は欲しがるが、働こうともせずに怠けてばかりいる。」と厳し く突き放した。一方で、そこで生活する子供の多さに遣る瀬無いような表情を見せ、「そこで生 活する子供を見ると悲しくなる、自分の幼い息子達にはあなた達は幸運なんだといつも言い聞 かせているわ。」と呟いた。現在、フィリピン政府は住民達に住む場所を提供し、マニラから離 れた場所へ移住させる計画を進めているようだが、彼らは何十年も住んだ土地を離れたくないと それを拒んでいるのだそう。また、彼らのような貧困層の間で蔓延する麻薬取引はフィリピンの 深刻な社会問題の一つとなっており、最初はお金が無いので、日用品のshoe glue(接着剤)か ら始まり、それがヒートアップし、比較的手に入れやすいシャブや更に覚醒作用の強い麻薬に依 存するようになるのだそう。うまく仕事にありつけない貧困層が麻薬に依存し、夜通し働く為 に中毒に陥いるという負の連鎖が起きているという。  現地の人と話すことで、違法スラムの抱える問題の深刻さを改めて痛感させられた。そして 今、完全にスラムを無くすためには、そこに住む多くの子供たちにコミュニティの外に目を向け させ、そこに留まる以外の無限の選択肢を与えることが必要であり、それを可能にするのはや はり教育しかないのではないかと考える。

今月はテーマを分けて書いてみた。最初には少し高望みな目標もあげたが、目に見える形での結 果や人を巻き込む事がまだまだ足りていないのが現状である。来月からはいよいよ楽しみにして いたフィリピン大学での授業も始まる。ミッドタームで取るのは社会科学の授業だ。法務省の活 動との両立をしっかりと心がけて、さらにスピードを意識して活動に取り組んでいきたい。

平尾ゼミナール 神山ひかる