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洪水が迫ってきたらどうする?家族は?この授業を受けたら安心です!

洪水を前にした行動計画マイタイムラインを作り上げた学生たち

教員の小西雅子です。

今年も日本各地で土砂災害や川の氾濫をもたらす大雨が降っています。同じ場所に大雨をもたらす「線状降水帯」という専門用語がすっかりテレビの天気予報でおなじみになるほどです。地球温暖化も相まって洪水被害が今後さらに深刻化していくことが予測される中、グローバル社会の課題を学ぶ「環境と防災」の授業では、“命を守る”講義を展開しています。

特に東京などの大都市は海のそばにあることが多いため、海抜ゼロメートル地帯が広がっています。たとえば東京の荒川や江戸川など大河川の下流地域では、いったん洪水となると、水が1~2週間にわたって引かないことが予測されています

そのためこういった地域では、自宅近くの避難所に逃げても危険なのです。隣の区や県まで避難しなければならず、しかもそれは洪水が予測される1~2日前に避難しなければなりません。なぜならば周辺の100万人以上が同時に避難する上、動く手段である公共交通機関を担う方々も当然ですが避難しなければなりませんので、当日では逃げ遅れる可能性が高いからです。

この授業では、地球温暖化の科学を学んだあとに、実際に台風による大雨に備えて、2日前、1日前、当日にそれぞれ何をするか、といったタイムラインに沿って、避難計画を立てていきます。ポイントは自分だけではなく、実際に家族全員で話し合うことにあります。

家族が非常に協力的だった!と喜ぶ声もあった一方、自宅が工場になっているため避難しない、という家族を説得できなかった、という声もあり、全員が真剣に周りを巻き込んで検討しました。特に両親が病院関係者などの場合には、むしろ仕事場を離れられず、自分一人で避難しなければならない、といったケースもありました。

「一人暮らしのため、母と話し合ったら、母は非常に協力的に検討してくれた!」

「両親が医師で一緒に避難できないため、祖父母宅に早めに避難する」

「両親兄弟は避難場所を決めたが、工場経営の祖父母は自宅を離れないと言われたが、説得できなかった」

「避難袋をすべて更新。特に持病のある家族のために、常備薬も用意した」

「家族のようなペットがいるため、ペットを連れて避難できるか調べた」

「自宅は安全なので、危険な地域に住む友人家族を受け入れようと家族を説得した」

グループ内で話し合い、それを全体発表、最も人気のあった発表には賞品もあり、盛り上がりました!自分が気付かなかった視点もほかの学生の発表から得られ、どんどんそれぞれのタイムラインは充実していきました。

これからの時代は、残念ながら地球温暖化の進展とともに、洪水被害は拡大していきます。「これまでなかったから」というのは通用しません。今までにない避難が必要となる今後、ご家族は腰が重い場合もあるでしょう。そんな時には、最先端の科学の知見を学び、災害への備えを充実させている学生たちは、十分科学的根拠をもって説得できる力があります。自分と家族のみならず、周りの命をも守るリーダーに育っています!

皆さんもぜひ大雨災害対策、今一度考えてみてください。

  • 2019年に出された東京都江戸川区の水害のハザードマップには、「ここにいてはダメです」とでかでかと表紙に書かれ、区民に大きな衝撃を与えました。江東5区の海抜ゼロメートル地帯では、巨大台風が都心に上陸し、荒川と江戸川が同時に決壊した場合には、約250万人が浸水被害を受けると想定されています。

出典:江戸川区水害ハザードマップ(2019年)

江戸川区防災ハンドブック

https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e007/bosaianzen/bosai/kanrenmap/n_hazardmap.html